私が「十角館の殺人」を本屋で初めて手にしたのが5年前の2017年です。
帯には
「日本を代表する本格ミステリに全米も驚愕!」
「どんでん返し!」
と、魅力的な記載があり、すぐに購入しました。
館シリーズは全部で9作品ありますが、順番に読むことをお勧めします。
なぜなら、ネタバレにもなってしまいますし、登場人物にも関係してくるからです。
館シリーズを読んでいくと「あの時のあの建物だ」とか「前の物語の人だ」と繋がっていることが多くあるのです。
そのようにして館シリーズにはまっていくのです。
毎回、今までのミステリー小説にはないような言い表せないドキドキ感があります。
「読書が好きです。」
「んー-、やっぱりミステリー小説が一番好きですね。」
と、私は言っているのですが、2017年まで綾辻行人さんを知らなくてミステリー好きと言ってはいけませんでした。
この日、本屋で「十角館の殺人」を購入し読み終えた後、館シリーズを全て購入しました。
館シリーズを読み終えると、今度は綾辻行人さんの作品を探して読み、を繰り返していきました。
十角館の殺人
十角館の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の7人が訪れた・・・。
ここから連続殺人が始まる気配は感じます。
「十角館の殺人」は1987年に発行されています。
携帯電話がまだ普及していない時代が背景となっていて、もちろん大学生もこの時代の大学生です。
だから、この物語に入り込むと別世界が待っています。
孤島で次々と起きる殺人。次は自分の番かもしれないと全員が恐れながら十角館での日々を過ごしていきます。
犯人に追われ、逃げる場所がなくなり最後に殺された人物・・・そこから殺人犯は推理できますが、最後の最後まで何が起こるかわからないのが綾辻行人さんの作り上げる世界です。
みなさんに読んでほしい最後の方にある「あの1行」・・・そのために私たち読み手は綾辻ワールドに勝手に入り込み、抜け出すことが出来なくなるのです。
「十角館の殺人」の「あの1行」で綾辻行人さんの作品にはまっていくのです。
水車館の殺人
十角館を建築した中村青司が、岡山県の山奥に建てた水車館が2作目の舞台となります。
その水車館には、常に人前に出る時にはゴムの仮面と手袋を着けている主人と、幼少期に不幸が続いていた孤独な美少女の妻が住んでいます。
1年前に殺人が起きた十角館の時と、また同じメンバーが集まってしまうのです。
そこで、1人の男が密室から消失する・・・。
今回もまた、あの時の不可解な惨劇が繰り返されるのか。
今回の作品もクラシカルな空気があり、館のカラクリがおもちゃ箱のようで、不気味な館の怪しい雰囲気を出しています。
十角館の殺人で登場した島田潔が探偵役で登場し、謎を解いていきます。
そして、幻想画家・藤沼一成の遺作「幼影群像」を巡る恐るべき秘密も・・・。
最後の数ページは、鳥肌がたつほどの衝撃的な展開になり、信じられない結末を迎えます。
これぞ、館シリーズと言える不気味な雰囲気であり、読み始めると止まらなくなる物語です。
迷路館の殺人
館シリーズ3作目の中村青司が建築した館はなんと、地下の館、迷路館。
1作目「十角館の殺人」と2作目「水車館の殺人」で優れた推理力を発揮した島田潔の元に送られてきた1冊の推理小説から奇妙な物語は始まります。
迷路館を舞台にした推理小説の競作を始める、招かれた4人の作家たち。
それには莫大な賞金がかけられていた。
登場人物が揃ってくると迷路館での連続殺人の始まりだ。
しかし、今回は脱出が不可能な館・・・。
島田潔よ、早く推理にしなければ死者が増えていく!
なんと、島田に送られてきた1冊の推理小説は、実際に迷路館で起きた惨劇を元に書かれた物であった。
誰がこの小説を送ってきたのか。
その送り主と犯人の関係は・・・?
途中までは予想できる展開ですが、中盤からわからなくなり、最後に騙されます。
被害者の殺され方も状況も、ぞっとすること間違いなしです。
もし、その場に居たら発狂し、私は立ち直ることができないでしょうけど・・・。
作中作ということは冒頭からわかって読んでいますが、結末は想像を超えた驚きがたくさんあります。
館の見取り図はじっくり見ていくと気付けそう・・・。なのですが・・・。
人形館の殺人
自殺した父から相続にて受け取った京都の館に居住を移す主人公。
それは、顔のないマネキン人形が邸内各所に佇む「人形館」。
連続殺人が起こり、主人公の周りにも魔の手が及んでくる。
次に殺されるのは自分かもしれないと思い、怯え苦しむ主人公。
自分のこと、自分の周囲のことをよく知っている殺人犯。
誰なんだ!犯人は・・・。どこから見ているのだ!
次々に起こる殺人と奇妙なマネキン。
主人公と共に推理していくと、最後には悲惨な結末が待っていた。
自分を見失う恐ろしく悲しい殺人です。
自殺した芸術家の父の作品であるマネキン人形が館の廊下の色んな所に計6体も配置されている不気味な館の物語です。
時計館の殺人 上・下
今回の舞台は鎌倉の外れに建つ時計館の物語です。
その時計館では、10年前に亡くなった1人の少女の亡霊が出ると言われている。
十角館の惨劇を知る主人公は、オカルト雑誌の取材班の一員として、この館を訪れることになった。
訪れたのは、男女9人の取材関係者たち。
10年前に亡くなった少女の降霊術を行うのだが、そこで無差別殺人の恐怖が訪れた者たちを襲う。
この時計館も脱出不可能であり、108個の時計と共に奇妙な時を過ごすことになった。
そして、その脱出不可能な館の中で死者が続出する恐怖・・・その中で自分の身を守りながら犯人は誰なのか、亡霊の仕業なのか・・・考えていく。
しかし、最後には胸を締め付けられるほどの辛い結末が待っている。
終盤は読み手で予想不可能な綾辻マジック要素たくさんの展開が待っている。
どんでん返しのどんでん返し、しかも泣けてしまう結末です。
全てが終わって本を閉じた後も余韻が残り、もう一度頭の中で展開を考えてしまうほど衝撃的な印象が残る物語です。
ホラーとサスペンスを味わうことができるミステリーにあなたも最後まで引き込まれて下さい。
でも、最後は戻って来て下さいね。
黒猫館の殺人
「私が何者なのか調べてほしい。」と言う老人の依頼を受け、時計館での惨劇を目の当たりにした江南と名推理人の鹿谷は、真相を探るために今回も奮闘する。
その老人は、火災により記憶を失っていた。
過去の事件にまつわる老人の手記を読み解き、黒猫館の謎に迫る。
その手記には、黒猫館で起きた恐ろしい殺人事件のことが書かれていた。
前の5作とは趣向が違う読み応えです。
そして、前の5作と同じく最後には騙されるのですが、規模が今までに比べると大きく奇抜なのです。
さすが、6作目というほどの結末に大満足してしまいました。
1作目の「十角館の殺人」から毎回、読み手の期待以上のトリックと結末をくれる綾辻行人さんにミステリー好きとして感謝しています。
登場人物も他の作品より少なくシンプルです。
この最後の結末を当てることができる人はいらっしゃるのでしょうか。
暗黒館の殺人 1~4
忌まわしき影に包まれた浦登家が住む湖上の小島に外界から離れるように建つ暗黒館。
その館は黒一色に塗られた不気味な漆黒の館である。
小さな事故で出会った玄児は、暗黒館の当主の息子であった。
大学生の中也は玄児に招かれ暗黒館を訪れるが、それが数々の不思議で不気味な体験の始まりとなる。
そして、暗黒館に入ると同時に時代設定がわからなくなり世界観が変わります。
暗黒館は屋敷も広く部屋もたくさんあり、極めつけが中村青司のカラクリがあるので面白いのです。
そして、登場人物も多く関係性が複雑になっているが読み進めていくと、その関係性がわかってきて・・・わかると更に不気味な物語に入り込んでいきます。
暗黒館で行われる「ダリアの宴」はとてつもなく恐怖を感じました。
何の肉を食べているのでしょうか・・・。
そんな不気味なことは、読んでからのお楽しみですね。
今回の作品は文庫本で4冊になりますが、この暗黒館に入り浸ってしまうと、あっという間に終わってしまいます。
結末は、やはり今までの館シリーズにない奇抜な終わり方をします。
びっくり館の殺人
主人公・三知也が引っ越してきた町には、変な噂が囁かれる館が存在していた。
その名も「びっくり館」。
その館に住む少年と仲良くなった三知也たちは少年が住むびっくり館に遊びに行く。
そこで、少年の祖父が亡くなった孫の名前をつけた人形で腹話術をする異様な劇を見せられ、三知也たちは恐怖を感じる。
そこに、七色のびっくり箱の存在もわかり、どんどん謎が深まっていく。
そんなびっくり館で遂にクリスマスの夜、密室殺人が起きてしまう!
館シリーズの中でも子ども向けだと聞いていましたが、やはり読んでいるとドキドキしてしまい、子どもが読むのであれば夜は避けた方がいいと思った物語です。
所々に挿し絵もあるのですが、ホラー要素があり怖い雰囲気が漂っています。
特に腹話術の人形の絵はリアルで、今にも目や口の部分が動きそうです。
しかし、面白いトリックとワクワク感は私たち読み手を老若男女問わず裏切りません。
この本を閉じる時、不気味かつ恐怖感を残しつつ終わります。
私が読書を好きになったのは、小学生の頃、西村京太郎さんの殺人事件の物語を読み、本当に怖くてたまらないという感覚を覚えました。
いつまでも、かわいい、楽しい物語ばかりでは、小学生も高学年くらいになると面白くなくなってきます。
子どもだからというのではなく、読書を好きになるきっかけは「びっくり館」のように恐怖を感じながら読むと面白くて臨場感があって、読書にのめり込むきっかけになります。
奇面館の殺人 上・下
シリーズ9作目は、館の主人・影山が「表情恐怖症」であるため、招待された6人の男性は、みんな自室以外では鍵付きの仮面を被って過ごすことになる。
その館の名は「奇面館」。
季節外れの大雪で館が孤立する中、殺人が起きてしまう。
しかし、時代背景のせいか登場人物は誰も携帯電話を所持している人がいないため、外部との連絡は一切できず館にいるであろう殺人犯と共に過ごさなければならない状況にある。
関係者の大半が仮面を被り、素顔がわからない状況下で起きた前代未聞の異様な事件に名探偵・鹿谷が立ち上がる。
奇面館の秘密の真相に迫らなければ解決できない事件だ。
今までの館シリーズは「どんでん返し」や「奇抜な結末」であったが、今回の奇面館の殺人に関しては「巧妙なテクニック」がすごい!のです。
しかし!やっぱり!館シリーズなので、今回の奇面館も中村青司の怨念が残っています。
恐怖で未知なる館の物語です。
コメント